突然起こる激しい動悸や発汗、ふるえ、息苦しさなどの症状とともに、
死んでしまうかもしれないと思うほどの強い恐怖感に襲われる「パニック発作」を起こす病気です。
およそ100人に1人の割合で発症するといわれています。
パニック発作は多くの場合20分~30分で収まり、検査でも異常はみられません。
しかし、発作を繰り返すうちに、
「また発作を起こすのではないか」という恐怖心や不安感(予期不安)が生まれ、
発作への不安から大勢の人が集まる場所や公共交通機関、閉ざされた場所、
過去に発作を起こした場所などを避けるようになります。(広場恐怖)
「パニック発作」「予期不安」「広場恐怖」は、パニック障害の三大症状と言われ、
この3つの症状が悪循環となってパニック障害をさらに悪化させます。
悪化すると正常な社会生活に支障をきたし、うつ病を併発することもあります。
パニック発作はノルアドレナリン神経が異常興奮することで、
身体が受けるストレスに対して、防御反応が過剰に働くために、
動悸やふるえなどが起きると考えられています。
ノルアドレナリンを抑えるセロトニンが不足していることが関係していると言われ、
長期間におよぶストレスや疲労、睡眠不足が、発作を引き起こすきっかけとなります。
薬物療法
服薬により、脳内神経伝達物質であるノルアドレナリンとセロトニンのバランス改善を目指します。
使用される薬剤は、
「SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)」
「SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)」
「抗不安薬」などがあります。
心理療法
行動習慣を修正し、段階的に少しずつ不安を克服する「認知行動療法」や
心と体をリラックスさせる方法を身につける「自律訓練法」などが行われます。
東洋医学には「心身一如(しんしんいちにょ)」という言葉があります。
心と身体は切っても切り離せない関係にあるという意味で、
パニック障害をはじめとする心のトラブルも、
五臓という身体全体のバランスが崩れていることにより、起こっていると考えます。
東洋医学による施術は、緊張しやすい、不安を感じやすいなど、
「パニック発作が起こりやすい体質を改善していく」という視点から施術を行います。
現れている症状などから、
大きく4つのタイプに分けることができます。
脾気虚(ひききょ)
消化吸収や代謝機能などをつかさどる「脾」の働きが弱く、
体内の気血(エネルギー)が不足しているため、
中枢神経も衰弱してパニック発作を起こしやすくなっている状態です。
疲れやすい、息切れする、食欲がない、軟便などが特徴です。
心血虚(しんけっきょ)
心労が絶えないことなどで、精神活動をつかさどる「心」に、
十分なエネルギーが行き届かず不安を感じやすい状態です。
めまい、立ちくらみ、なかなか寝付けない、眠りが浅い、夢をよくみるなどが特徴です。
肝鬱気滞(かんうつきたい)
精神的なストレスや過度の緊張などで、
情緒をつかさどる「肝」の気の流れが鬱滞しているため、刺激に敏感な状態です。
些細なことでイライラする、お腹が張りやすい、便がすっきり出ないなどが特徴です。
腎陽虚(じんようきょ)
生命力の貯蔵庫ともいえる「腎」の働きが弱くなっていて、
心身ともに衰弱し、小さなことにもびくびくと恐れやすい状態です。
冷えやすい、耳鳴りや難聴、足腰がだるく感じるなどが特徴です。
当院では漢方と鍼灸によるオリジナル施術で、パニック障害に効果を上げています。
それぞれの証に従って施術内容が変わります。
一つひとつ見ていきましょう。
脾気虚(ひききょ)
体質的に脾の働きが弱く、体内の気血が不足しています。
疲れやすい、息切れ、軟便などの特徴があります。
漢方薬では、脾気を補う方剤を処方します。
代表的なものは、「四君子湯」、「六君子湯」 で、
弱っている消化器の働きを改善し、不足した気血を補います。
鍼灸でも脾の経絡をしっかりと補なった上で、
関連するツボなどにお灸をして、胃腸を整えていきます。
また、めまい、立ちくらみ、動悸、眠りが浅いなどの症状を伴う場合は、
心脾両虚と言って、心血も虚している状態です。
この場合、漢方薬では、生薬の竜眼肉といった心血を養う生薬が中心となる
「帰脾湯」や「加味帰脾湯」を処方します。
心血虚(しんけっきょ)
この体質の方は、
心血を養う生薬である「竜眼肉」「酸棗仁」「当帰」などが中心の
「帰脾湯」や「加味帰脾湯」、「酸棗仁湯」などを処方します。
鍼灸では、心・心包や肝の経絡を補い、働きを高めます。
肝鬱気滞(かんうつきたい)
この体質の方は、情緒を司る五臓の肝気が滞っていますから、
漢方薬で肝気の流れを良くします。
代表的な漢方薬は、「四逆散」「柴胡桂枝乾姜湯」などです。
鍼灸では肝の滞りを流す手法を使って、肝気の流れをスムーズにします。
腎陽虚(じんようきょ)
この体質の方は、身体の深いところの腎を補います。
代表的な漢方薬は、「八味地黄丸」「牛車腎気丸」などです。
鍼灸でも腎を補い、お灸で下半身を中心に温めていきます。